俗々・『地下室の手記』〜混沌が渦巻く浮遊の世界〜

ここに記されていることは空想家の「とりとめない妄想」でフィクションです・・・・・

【灰色の街に生きて セックスワーカーたち】(1)風俗に誘う「狩り場」〜 西日本新聞〜

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隙狙い緩やかに強要

 クリスマスのイルミネーションがともり始めた福岡市・天神。商業施設の前でじっと待ち、一人歩きの女性を見定めるスーツ姿の男たちがいる。「空いた時間で稼ぎませんか」。さっと並んで数メートル歩き、諦めては同じ行動を繰り返す。

 夜の街の仕事を仲介するスカウトたちだ。近くには九州最大の歓楽街・中洲がある。店側が勧誘するケースもあるが、店に紹介した女性の売り上げ分から数%を手にする「スカウトバック」の仕組みがここ数年で定着し、専門業者もいる。

 「声を掛けてカフェでの面接につながるのが100人に1人やね。そこで話せば大抵は落とせる」。15年以上のスカウト経験がある男性(33)が中洲で取材に応じた。あっせんした女性は5千人を超え、紹介先の1割は性的サービスを提供する風俗店という。

 性交を伴わない店舗型や派遣型のヘルスのほか、ソープランドのように「あくまで浴場の提供。個室内の行為までは知りようがない」との建前で、売春が常態化している店もある。「そういうところは客の単価が高いからもうかるんだよ」。男性の場合、高級ソープへの紹介料だけで2千万円を稼いだ年もあるという。

 若者が集う華やかな街がスカウトたちの「狩り場」となっている。

    ◇    ◇

 ある日のカフェ-。

 「留学したいんやね。親に頼るより、自分で稼いだ方がよくない?」

 「キャバクラだと収入はこれくらい。足りんよね」

 「上半身だけ裸になるパブもあるけど、大勢の前で脱ぐのは平気?」

 「嫌なら個室のヘルスかソープかな。セックスのスキルアップにつながるし、彼氏も喜ぶと思わん?」

 世間話から始まり、自分で選ぶように誘導される。天神でスカウトされた福岡市の女子大学生も「その日のうちに契約書みたいな紙にサインしてしまった」と振り返る。嫌になって無断欠勤すると多額の罰金を科され、余計に辞められなくなる人もいる。

 「モデルやアイドルにならないか」と誘われて契約した10~30代の女性197人中、53人(27%)が契約外の性的行為の撮影を求められた-。2月に公表された内閣府の調査で、性ビジネスにおける人権侵害の一端が表面化した。アダルトビデオ(AV)への出演を強要された人もいた。

 スカウト歴15年の男性も「基準は顔とスタイル。良ければキャバ、そうでもなければソープやヘルス。AVのプロダクションに売ったこともあるよ」と淡々と語る。スカウトバックを元手にトイチ(10日で利息1割)のヤミ金融も営み、収入源の女性にさえ貸していたという。

 女性を商品として売買する現実がすぐそこにある。

   ◇    ◇

 違法と合法が重なるグレーゾーン。それでもなお、性的行為を職業とするセックスワーカーは絶えない。風営法で届け出のある性風俗店だけで全国に約2万2千あり、年々増えている。中には自ら飛び込む女性もいる。なぜか。性差別意識が深層に広がる灰色の街に彼女たちの姿を追った。

 

=2017/12/13付 西日本新聞朝刊=